2017/01/29

大蓮寺の早春の甘い香り|京都知られざる穴場の絶景

大きな蓮(ハス)の寺と書いて大蓮寺(だいれんじ)。東山二条(左京区)にある浄土宗の小さな寺院です。寺名のとおり、6月下旬から8月中旬頃まで、鉢植えの40数品種のきれいなが境内を埋め尽くします。

大蓮寺のホームページには京都を撮り続ける写真家水野克比古さんの美しい蓮の写真が載っています。また、後光明天皇が、夫人の安産祈願を大蓮寺の和尚に命じ、無事に皇女が誕生したことから、「安産祈願の寺」としても知られています。

春を告げるほのかな香りに癒される

年始から大寒にかけて、大蓮寺ではソシンロウバイ(素心蝋梅)の花が咲きます。寺院が密集している西寺町通沿いの小さな門から入ると、思わず驚嘆の声をもらしてしまうほど見事なロウバイが迎えてくれます。

柵で囲ってありますが、近づいて見やすいように足場が作ってあります。上の写真は、1月末に足場に乗って本堂に向かって撮ったもの、下の写真は反対側から山門に向かって撮ったもので、同じロウバイの木です。まだつぼみがあったので、満開はもう少し先です。

近くで見ると、半透明のロウに似た質感の黄色のかわいい花です。甘くて芳しい香りを境内の一面に漂わせています。ロウバイは、英名をWinter sweet(ウィンター・スウィート)といいます。

なお、ロウバイは漢字で「蝋梅」と書きますが、ロウバイはロウバイ科で、梅はバラ科です。つまり、ロウバイは梅ではありません。花はポロポロと散りやすいので、触らないでください。

ロウバイの他にも境内には、鉢植えの花があります。下の写真は、木瓜(ボケ)の花です。開花にはまだ早く、ほとんどがつぼみです。200を超える品種がありますが、一般的な開花期は3月~5月です。

花の少ない寒い冬だというのに、大蓮寺の境内は花であふれています。寒い時期にも寺に来られる方への「おもてなし」の心を感じます。

鉢植えですが、梅の花も咲いています。

大蓮寺は、京都市内の観音様を巡る「洛陽三十三所観音霊場」の第八番札所です。開門中は本堂脇壇に安置されている十一面観音菩薩を参拝できます。寒い冬は訪れる人も少なく、ゆっくり鑑賞できます。



🌸アクセス
京都市左京区正往寺町457(東山二条西入ル一筋目下ル)
バス:京都市営バス「東山二条」または「東山仁王門」バス停 徒歩3分

🌸ホームページURL
大蓮寺オフィシャルサイト
http://www.anzan-no-tera.jp/index.html

🌸公衆トイレ
なし

📷周辺の見所
平安神宮、細見美術館

2017/01/28

清凉寺の梅と湯豆腐ランチ|京都知られざる穴場の絶景

清凉寺(せいりょうじ)は、嵯峨釈迦堂とも呼ばれる浄土宗の寺院です。源氏物語の主人公光源氏のモデルとされる源融(みなもとのとおる)の山荘「棲霞観」の跡に立っています。

嵐山の方向から来ると、2階建で上層にも下層にも屋根のある二重門の仁王門が見えてきます。「嵯峨野の顔」とも称される仁王門をくぐると、嵯峨野エリアではひときわ広い境内に出ます。

本山級の風格を備える広い屋根の本堂

広い境内には、本瓦葺きのゆったりした姿をした本堂(釈迦堂)、阿弥陀堂や多宝塔などが配置されています。本堂には、本尊の釈迦如来立像(国宝)を安置しています。本尊の胎内には絹製の五臓六腑が納められていたことから、お釈迦様の生きている姿を伝えた「生身の釈迦」と呼ばれています。

本堂の拝観は有料ですが、本堂のほかに大方丈や、その前庭の小堀遠州の作庭とされる枯山水庭園を拝観できます。霊宝館の特別公開(4月・5月、10月・11月)は別料金で、旧棲霞寺本尊の阿弥陀三尊像などの国宝や重要文化財が公開されます。

梅を愛でた後は至福の湯豆腐ランチへ

本堂の右手(東側)には阿弥陀堂があり、その周囲には梅の木があります。本堂や阿弥陀堂と梅の花との競演は、実に素晴らしい光景です。撮影した1月下旬、阿弥陀堂前の紅梅は咲き始めですが、白梅はもう少しで見頃という感じでした。

また、境内には、京料理ゆどうふ店「竹仙」があります。繁忙期には観光客が行列をなして買い求める老舗豆腐店「森嘉」の豆腐を使用した湯豆腐などを味わえます。森嘉は、仁王門を出て東へすぐの場所に店を構えています。


多宝塔の前には、紅梅があります。こちらの梅は、まだぽつぽつと花を付けているだけでした。多宝塔の周辺は、紅葉もきれいです。多宝塔の裏手には、源融の父の嵯峨天皇、檀林皇后、源融の塔が並んでいます。

清凉寺の境内のあちこちに梅の木が植えられていますが、ガイドブックでは梅の名所として紹介されていない穴場の名所です。梅の花が咲く時期は観光客は少なく、心静かに京都の美の絶景を味わうことができます。



🌸アクセス
京都市右京区嵯峨釈迦堂藤ノ木町46
バス:京都市営バス・京都バス「嵯峨釈迦堂前」(西へ徒歩2分)

🌸ホームページ
清凉寺(嵯峨釈迦堂)オフィシャルサイト
http://seiryoji.or.jp/

🌸公衆トイレ
あり(きれい)

📷周辺の見所
宝筐院、大覚寺、二尊院、常寂光寺、祇王寺

2017/01/21

梅の香りと干支大絵馬の北野天満宮|京都知られざる穴場の絶景

北野天満宮は、菅原道真(すがわらのみちざね)公を祀っている神社です。京都人は、北野天満宮のことを「北野の天神さん」と呼んでいます。

毎月25日は縁日で、境内にグルメや骨董などの露店が出店する天神市が開かれ、多くの人でにぎわいます。また、この日は特別に宝物殿が公開(有料)されます。縁日は、菅原道真公の誕生日の6月25日と亡くなられた2月25日に由来しています。

楼門でジャンボ干支絵馬がお出迎え

ひときわ大きい一の鳥居から楼門へ進むと、ジャンボ干支絵馬が掲げられていました。この大絵馬は毎年12月上旬に楼門に取り付けられるので、京都の師走の風物詩として知られています。

シャンボ絵馬は、釘は一本も使われていません。神職や宮大工が重さ100kgを超える巨大な絵馬を運び込み、楼門に取り付けます。絵馬は1月25日まで掲げられます。

梅の香りは開花直後の朝が最高

北野天満宮といえば、道真公がこよなく愛した梅の名所です。撮影した1月中旬、宝物殿の前にある白梅は、もう満開近くまで咲いていました。境内には梅苑を含め50種、約1500本の梅の木があり、品種の多さ、木の数ともに京都髄一です。

毎年、梅の開花に合わせて1月下旬か2月上旬ころから梅苑が公開されます。有料ですが、茶屋でお茶と茶菓子をいただけます。梅の間を縫うように延びる散策路を歩けば、梅の香りに包まれます。

梅苑以外にも境内の至る所で梅の花を見ることができます。「飛梅伝説」が伝わる本殿前の御神木の梅「紅和魂梅(べにわこんばい)」は、樹齢300年以上と推定されています。

撮影した1月下旬、絵馬所の前にある早咲きの寒紅梅は、もう見頃を迎えていました。花王の研究によると、梅の花は「開花直後の朝に最も香気量が多く、フレッシュな香りを放つ」ので、参拝者の少ない朝の訪問をおすすめします。

梅の開花の状況は、北野天満宮のTwitterやFacebookで発信されています。梅は、3月末頃まで楽しめます。

裏の社も併せてお参りするのが習わし

国宝本殿で参拝したら、本殿の裏へまわります。摂社や末社がありますが、本殿の背面にも三柱の神様が祀られています。道真公の御神座と背中合わせの御神座「御后三柱(ごこうのみはしら)」で祀られているのは、道真公の御先祖の天穂日命、祖父の菅原清公、父の菅原是善の三柱の神様です。

撮影の少し前に積雪があったので、屋根にまだ少し雪が残っていました。京都市中心部での積雪は年に数日しかありませんので、京都の雪化粧を見られたあなたはラッキーです。



🌸アクセス
京都市上京区馬喰町
バス:京都市営バス「北野天満宮前」バス停
電車:京福電気鉄道/北野線「北野白梅町駅」(東へ徒歩6分)

🌸ホームページURL
北野天満宮オフィシャルサイト
http://kitanotenmangu.or.jp/index.php
北野天満宮Facebook
https://www.facebook.com/kitanotenmangu

🌸公衆トイレ
あり(普通)

📷周辺の見所
平野神社、上七軒、大将軍八神社、千本釈迦堂(大報恩寺)

水火天満宮の梅と水火の用心|京都知られざる穴場の絶景

菅原道真公を祀る天神社・天満宮は、全国に約1万2千社もあります。947年に創建された総本社の「北野天満宮」よりも古い、923年に創建された日本最初の天満宮が、水火天満宮(すいかてんまんぐう)です。

京都市内にはこのほか、誕生の地と伝わる「菅大臣神社」や「菅原院天満宮神社」、北野天満宮の前身ともいわれる「文子天満宮」などがありますので、天満宮巡りをすることもできます(洛陽天満宮25社巡り)。

水難・火難からお守りくださる天神


菅原道真公といえば、現代では学問の神様として広く信仰されています。水火天満宮は、都の水害・火災を鎮めるために、醍醐天皇の勅願により菅原道真公の神霊を勧請し建立された神社ですので、学業等の他に水難・火難除けで崇敬を集めています。

京都の人々は、度重なる洪水や火災に悩ませられていました。千年以上たった現代でも、近年は豪雨による水害が相次いでおり、いつの時代にも欠かせない神様です。

菅原道真公が愛した梅めぐり

は、阿呼(あこ)と呼ばれていた幼い頃から道真公がこよなく愛した花です。わずか5歳で詠んだ和歌、11歳で作った漢詩にも梅の花が出てきます。

水火天満宮の鳥居は、堀川通沿いと天神公園の2か所にあります。堀川通沿いの鳥居から境内に入ると、右手に紅梅、左手に白梅が迎えてくれます。撮影は1月中旬、左手の白梅は、まだ咲き始めでした。

つぼみも硬いものとほころんでいるものがあり、様々な姿を楽しめます。満開に向かって徐々に姿を変えていく過程を見るのも、美しい花の楽しみのひとつです。

続いて、右手の紅梅。白梅よりもさらに咲き始めといった感じです。花はまだぽつぽつとしか咲いていません。花は開ききっていないものは丸みをおびていて、咲き始めの時期ならではのかわいらしい姿を楽しめます。

梅のほか、境内には紅枝垂れ桜の木が2本あります。小さな神社なので、桜が境内を覆うように咲き誇ります。穴場の桜の名所です。



🌸アクセス
京都市上京区扇町722-10 (堀川通寺ノ内上ル)
バス:京都市営バス 「天神公園前」バス停

🌸ホームページURL
水火天満宮オフィシャルサイト
http://www.suikatenmanguu.com/index.html

🌸公衆トイレ
なし

📷周辺の見所
茶道資料館、宝鏡寺、本法寺、妙蓮寺

10月から咲く妙蓮寺の桜|京都知られざる穴場の絶景

本門法華宗の大本山「妙蓮寺(みょうれんじ)」は、一般のガイドブックではあまり紹介されていないお寺ですが、京都ツウの本には必ず出てくる必見のお寺です。妙蓮寺に行くときは、四季を通じて可憐な花が迎えてくれる期待感であふれます。

5月はツツジ、9月から10月頃は、山門前の参道脇や境内に芙蓉酔芙蓉が咲き、11月から翌春の3月末まで咲き続ける「妙蓮寺椿」でも知られています。そして、寒い秋冬でも山門をくぐって境内に入ると、出迎えてくれる桜があります。

御所から移築された格式高い山門

境内に入るとまず目に飛び込んでくるのは鐘楼です。国の重要文化財には指定されていませんが、その立派な姿に見とれます。そして、その先で御会式桜(おえしきざくら)が出迎えてくれます。御会式とは、日蓮聖人の命日である10月13日に日蓮宗各寺で行われる報恩感謝の法要のことです。

御会式桜の案内板には、「日蓮大聖人が御入滅された10月13日前後から咲き始め、翌4月8日のお釈迦様御生誕のころに満開になるめずらしい桜です。日蓮大聖人が御入滅になられた時、開花したという言い伝えのある桜です。」と説明があります。ただし、命日の10月13日は旧暦ですので、現在の暦に換算すると11月になります。

御会式桜は「十月桜」の別名

御会式桜は、品種としては「十月桜」です。その名のとおり10月ごろから咲き始めて1月頃まで咲き、春にも花を咲かせます。秋冬咲きの花は、春よりも小さめです。秋から春まで咲いているので、訪問の日程が組みやすいのが利点です。

1月中旬の撮影日には、十月桜が小さくてかわいらしい八重咲の花をつけていました。この桜の散った花びらを持ち帰ると、恋が成就するという言い伝えがあります。御会式桜の背後の建物は本堂です。反対側から見ると、桜と鐘楼がきれいに見えます。


ここの桜は根本近くで幹が分かれていて、背が低いので間近で花を観賞できます。十月桜の花は八重咲で、色は白または淡紅ですが、ここの花は淡紅です。

妙蓮寺の公式ツイッターでも、「この種の桜の中では緋色が強く、寒桜(カンザクラ)と間違われる方が多いようです。」とツイートされています。

十月桜は、京都市内では平野神社や京都御苑などでも見ることができます。また、妙蓮寺は、早咲きの椿「妙蓮寺椿」でも有名です。一重で朱紅の美しい花ですので、改めて紹介したいと思います。

また、妙蓮寺には伏見城から豊臣秀吉によって移されたと伝わる臥牛石(がぎゅうせき)を中心とした枯山水庭園「十六羅漢の庭」もあります。重要文化財長谷川等伯一派による障壁画、松尾社一切経などの見学は、予約が必要です。



🌸アクセス
京都市上京区妙蓮寺前町875(寺之内通大宮東入)
バス: 京都市営バス「堀川寺ノ内」バス停(徒歩3分・寺之内通を西へ約70m)
電車:京都市営地下鉄(烏丸線)「鞍馬口駅」(徒歩10分)

🌸ホームページURL
妙蓮寺オフィシャルサイト
http://myorenji.or.jp/

🌸公衆トイレ
なし

📷周辺の見所
宝鏡寺、本法寺、妙顕寺、茶道資料館

冬にも出会える平野神社の桜|京都知られざる穴場の絶景

平野神社(ひらのじんじゃ)といえば、京都では言わずと知れた花見の名所です。花見の時期は、境内に仮設の桜茶屋が設けられ、日夜楽しい宴が繰り広げられます。平野神社が桜の名所として知られるのは、桜の品種の多さにあります。平野神社によると、平野神社発祥の桜をはじめ、約60種、400本の桜があります。

春は3月から4月にかけて次々と姿の異なる桜が咲きます。ひときわ存在感を放つ「魁桜(さきがけざくら)」は、平野神社発祥の桜で早咲きの品種であることから、この桜が咲き出すと都のお花見が始まると言われています。

1年に2度咲く桜がお出迎え

平野神社 Hirano Shrine
平野神社では、秋冬にも桜を見ることができます。境内には十月桜が、所々に植えられています。その名のとおり10月ごろから咲き始めて1月頃まで咲き、春にも花を咲かせます。秋冬咲きの花は、春よりも小さめです。

撮影日は1月中旬ですが、十月桜が小さくてかわいらしい八重咲の花をつけていました。葉は落葉しており、枝だけの状態です。ここの花は、他所の十月桜と比べると淡紅というよりかは白に近い感じです。

「日本花の会」の花図鑑で調べてみると、十月桜は「江戸彼岸と豆桜の雑種と推定されるコヒガン系の品種で、春と秋の二季咲きの桜です。秋は9月頃から咲き始め、暖かいところでは冬の間も少しずつ咲きつづけます。」とあります。

平野神社は桜だけじゃない

平野神社 Hirano Shrine
ほとんどの参拝客は、十月桜に目もくれずに行ってしまいます。写真を撮っている人がいると、何があるのかと寄ってきて初めて気が付くといった感じです。平野神社の境内には、桜以外にも花が植えられていますので、四季を通じて花を楽しめます。

大鳥居からすぐの「出世導引稲荷社」の前では、スイセンが咲いていました。写真はうまく撮れない位置ですが、肉眼では鳥居が背景になって良い感じに見えます。スイセンといえば、福井県の越前海岸の水仙畑が有名ですね。スイセンの花期は、12月から2月です。

平野神社 Hirano Shrine
同じく出世導引稲荷社の前では、ロウバイ(蝋梅)の花が少し咲いていました。市内の住宅街では花が咲いているのを見かけますが、ここのロウバイは少し遅いようです。ロウバイは、透き通るような質感が他の花にはない魅力です。光沢のあるロウ細工のような花びらは、不思議な質感です。

ロウバイの花は2月にかけて咲きますので、少し近づいて香りをかいでみてください。豆知識ですが、ロウバイは漢字で「蝋梅」と書きますが、ロウバイはロウバイ科で、梅はバラ科です。しかし、梅に負けず劣らず、とてもよい香りがします。

重要文化財の本殿で参拝

平野神社 Hirano Shrine
平野神社の本殿も見所です。国の重要文化財に指定されています。奥に4つの殿があるのが見えますが、2つの殿で1つの棟になっています。その独特な建築様式は、「平野造り」または「比翼春日造り」と呼ばれています。正式参拝で、御神前で玉串を捧げて拝礼することができます。

平野神社は、普段は参拝客は少なく、静かな時間を過ごせます。平野神社から徒歩ですぐの「北野天満宮」とセットで訪問するのがおすすめです。北野天満宮の北門から出て西へ向かえば、平野神社の大鳥居がすぐに見えてきます。



🌸アクセス
京都市北区平野宮本町1
バス:京都市営バス「衣笠校前」バス停 (北へ徒歩3分)
電車:京福電気鉄道/北野線「北野白梅町駅」 (北へ徒歩6分)

🌸ホームページ
平野神社オフィシャルサイト
http://www.hiranojinja.com/

🌸公衆トイレ
あり(普通)

📷周辺の見所
北野天満宮、金閣寺、等持院

2017/01/14

妙智院で京都名物の湯豆腐ランチ|京都知られざる穴場の絶景

嵐山は、奥深い京都の魅力が凝縮されている指折りの人気観光スポットです。そんな嵐山も秋の紅葉シーズンが終わると、年末年始を除けば春の桜まで冬はとても静かです。冬の嵐山は、ゆっくり温泉やグルメを堪能し、人のいない「竹の小径」でインスタ用の写真を撮るなど、冬でも十分楽しめます。

どの季節に嵐山に行っても、外せない観光スポットのひとつは、世界遺産の天龍寺です。今回ご紹介するのは、その天龍寺の塔頭である妙智院(みょうちいん)です。妙智院は、天龍寺の駐車場入口のすぐ横にあります。拝観はできませんが、嵐山のメインストリートから天龍寺へ通り抜けできます。

京都名物の湯豆腐を堪能して境内へ

妙智院の敷地内には、直営の豆腐料理店「西山艸堂(せいざんそうどう)」があります。安政年間に創業の「森嘉」の嵯峨豆腐を使用している嵯峨野で一番古い湯豆腐処です。嵐山ではこの店以外に「豆腐料理 松ヶ枝」、「湯豆腐 嵯峨野」、「湯どうふ 竹むら」などでも、おいしい湯豆腐が食べられます。京都らしいグルメのひとつですので、ぜひ食べてみてください。

湯豆腐を食べた後は、妙智院の境内を通り抜けてください。天龍寺側の門の右手に立派な白梅があります。撮影した1月中頃、花は少しだけですが、咲き始めていました。苔がきれいなので、花がもっと咲いてくると苔の緑よく合います。梅の左手は庫裡の玄関で、入れないように柵が置いてあります。

境内には梅以外にもナンテン、ロウ細工のような黄色い花を咲かせるロウバイ(蝋梅)があり、冬でも色鮮やかな空間になっています。ここは通り抜けしないともったいないと思います。

1月中頃のロウバイは、まだほとんどがつぼみです。前夜の湿雪で、しずくがたれていました。ロウバイの花は、開くと透き通るような淡い黄色になります。まるでロウ細工のような不思議な質感の花からは、甘い芳香が漂います。

ロウバイの花は2月にかけて咲きますので、少し近づいて香りをかいでみてください。豆知識ですが、ロウバイは漢字で「蝋梅」と書きますが、ロウバイはロウバイ科で、梅はバラ科です。つまり、ロウバイは梅ではありません。梅がバラ科というのも、不思議に思われるかもしれません。

また、境内には宝徳稲荷と弁財天の2柱の神様がお祀りされています。天龍寺の山内では、毎年2月3日の節分の日に「天龍寺七福神めぐり」が行われます。七福神をお参りすると、7つの災いを除き、7つの幸福を授かるといいます。ここでは七福神の布袋尊の代わりに宝徳稲荷(稲荷神)になっています。山内塔頭を巡ってお札を受け取り、1年の幸福を祈願します。

世界文化遺産の天龍寺をサザンカが彩る

妙智院の境内を天龍寺側の門から出て西へ行くと、天龍寺の勅使門(ちょくしもん)があります。天皇からの使者である勅使を迎える時にだけ開かれた門です。勅使門は、寛永年間(1624年~1644年)のものとされています。天龍寺では最古の建造物で、桃山時代の様式を伝えています。

晩秋から冬にも勅使門のかたわらにはサザンカ(山茶花)が咲きます。サザンカは見た目がよくツバキ(椿)に似ていますが、ツバキと異なり、花弁が1枚1枚落ちます。天龍寺前庭は、サザンカの名所として知られています。11月から2月にかけて、赤や白、ピンクの花が咲きます。

撮影日は、この冬最強の寒波が来襲中で、吹雪いては止んでを繰り返していました。冬の京都は底冷えや、春秋に比べると殺風景で敬遠しがちになるかもしれませんが、足を運べばキレイな景色やおいしいものに出会えます。ぜひ人の少ない静かな京都を楽しんでください。



🌸アクセス
京都市右京区嵯峨天竜寺芒ノ馬場町63
バス:京都市営バス「嵐山」バス停、京都バス「京福嵐山駅前」バス停
電車:京福電鉄「嵐山駅」、JR嵯峨野線「嵯峨嵐山駅」

🌸ホームページURL
なし

🌸公衆トイレ
なし

🌸周辺の見所
天龍寺、渡月橋、野宮神社、竹林の小径、大河内山荘

嵐山に安倍晴明のお墓がある?|京都知られざる穴場の絶景

嵐山といえば「渡月橋」に「竹林の小径」、「天龍寺」といった数々の観光スポットがありますが、嵐山に安倍晴明(あべのせいめい)に関係するスポットがあるのをご存じでしょうか。

安倍晴明は、平安時代に陰陽師として名声を極めた人物です。京都で安倍晴明といえば、京都市内の中心部にある屋敷跡に建てられた「晴明神社」を訪れるのが定番です。今回ご紹介するのは、安倍晴明の墓所です。


嵐山にある陰陽師・安倍晴明の墓所

この墓所は、普通のガイドブックには載っていないので、ここを訪れる人はほとんどいません。渡月橋から軽く歩いて行ける範囲ですが、閑静な住宅街の奥まった所にあるのでとても静かです。墓所の場所は、Google マップでもちゃんと表示されます。

墓所の東隣には、大堰川や高瀬川を開削した角倉了以(すみのくら りょうい)をまつる「角倉稲荷神社」があります。また、北側には第98代天皇・南朝第3代の長慶天皇の「嵯峨東陵」(さがのひがしのみささぎ)があります。

墓所には花が供えられ、周囲もきれいに掃除されています。地域の方々が安倍晴明を敬い、ここを大切に守られているのでしょう。撮影した1月中旬、石塔の前には、スイセンやナンテンが植えられていました。寒い冬にも花を絶やさないという地域の方々の温かい心遣いを感じます。

石塔には、清明が用いた魔除けを意味する「五芒星(ごぼうせい)」の紋が刻まれていますので、これだけで結構テンションが上がると思います。また、この石塔は、その周囲を五芒星が刻まれた石で囲まれています。

この墓所は、フィギュアスケートで金メダルに輝いた羽生結弦さんも訪れている「晴明神社」(上京区)の飛び地境内となっています。毎年、安倍晴明の命日にあたる9月26日に同神社が嵯峨墓所祭を行われています。

もっとも安倍晴明の本当の墓所がどこなのかは定かではありません。ここも後世の陰陽師らが各地に造った晴明塚のひとつではないかとみられています。


高い知名度のわりに安倍晴明は謎が多い人物で、生誕地すら定かではありません。921年に阿倍野で生まれたとされています。死亡の記録もないそうです。墓所の入口には、「陰陽博士安倍晴明公嵯峨御墓所」の石碑が立っています。昭和47年に現在の形に整備されています。

ところで、何で安倍晴明をお知りになられましたか?一般的な教科書には登場しません。野村萬斎さん主演の映画「陰陽師(2001年)」、夢枕獏さんの小説「陰陽師」シリーズ、佐々木蔵之介さん主演のドラマSP「陰陽師」、アニメなど数々の作品に登場しています。平安・中世文学作品には、安倍晴明に関する神秘的な逸話が載せられています。

あいにく撮影日は、この冬最強の寒波が来襲し、吹雪いていました。京都市の中心部では雪は年に数日しか降りませんので、古都の雪化粧に出会えたあなたはラッキーです。嵐山の雑踏から少し離れて、稀代の陰陽師・安倍晴明ゆかりの地を訪れてみてはいかがでしょうか。



🌸アクセス
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺角倉町12
バス:京都市営バス「嵐山」または「角倉町(東行のみ停車)」バス停 徒歩5分
電車:京福電鉄「嵐山駅」徒歩8分

🌸ホームページURL
晴明神社オフィシャルサイト
https://www.seimeijinja.jp/

🌸公衆トイレ
なし

📷周辺の見所
渡月橋、竹林の小径、天龍寺、鹿王院