2017/02/25

妙法院の梅と国宝の庫裏|京都知られざる穴場の絶景

妙法院(みょうほういん)は、天台宗の寺院です。東山の青蓮院、大原の三千院と共に代々皇族から門主を迎えた天台三門跡のひとつです。

妙法院は、普段は非公開で観光客にあまり知られていない寺院です。千体の国宝千手観音坐像で有名な三十三間堂蓮華王院本堂)は、妙法院が所有・管理している仏堂です。

※国宝の庫裏は、保存修理工事が令和8年度まで続く予定です。

幕末の歴史舞台にもなった名門寺院

上の写真は、国宝に指定されている庫裏(くり)です。国宝の庫裏は、妙法院の他には宮城県の瑞巖寺(ずいがんじ)しかありません。庫裏は、寺院の台所であり、居住する場所です。

豊臣秀吉方広寺大仏殿の落慶法要の際、千僧供養を行ったときの食事を準備した遺構と伝えられていますが、正確な建立年代は明らかでありません。

高さは18mもあり、本瓦葺きの屋根の上には煙出がついています。内部の小屋組などの意匠に桃山時代の気風をよく現わしているとされています。

庫裏の唐破風を乗せた玄関の前には、紅枝垂れ桜が植えられています。満開の桜が庫裏を美しく彩る光景は、京都らしい美しさを感じさせる絶景です。

上の写真は、重要文化財に指定されている玄関です。撮影した2月下旬、玄関前の庭では、白梅が見頃になっていました。

玄関と大書院は、東福門院(第2代将軍徳川秀忠の五女、後水尾天皇の中宮)の入内時に御所に造営された殿舎の一部を賜ったものと伝えられています。

上の写真は、宸殿(しんでん)です。皇族や公家が住持を務める門跡寺院に特有の建物です。幕末の七卿落ち(しちきょうおち)という歴史の舞台として有名です。

1863年に起きた八月十八日の政変というクーデターで長州藩は京都を追われることとなり、藩兵千余人と失脚した尊王攘夷派の7人の公家は、妙法院から長州へと下りました。

宸殿の前には、紅白の梅の花が咲いています。紅白そろって見頃を迎えていました。

毎年5月に行われる「五月会」や「非公開文化財特別公開」が開催されているときは、通常非公開の伽藍内部が公開されます。



🌸アクセス
京都市東山区妙法院前側町447
バス:京都市営バス「東山七条」バス停
電車:京阪電気鉄道京阪本線「七条駅」東へ徒歩7分

🌸ホームページURL
京都観光Navi:妙法院

🌸公衆トイレ
あり(きれい)

🌸周辺の見所
智積院、三十三間堂、養源院、豊国神社、方広寺

2017/02/19

智積院の梅と国宝の障壁画|京都知られざる穴場の絶景

智積院(ちしゃくいん)は、真言宗智山派(ちさんは)の総本山です。末寺は約3,000ヶ寺にもおよび、初詣の参拝者の多いことで有名な千葉県の成田山新勝寺もそのひとつです。

智積院は、紫陽花、寺紋の桔梗紅葉など、四季折々の風景を楽しむことができる花の名所として知られています。早春にはが、金堂へと向かう参道の両側を彩ります。
 

梅の香り春の風情が漂う総本山

参道脇のほか金堂前や金堂裏のあじさい苑に紅白の梅が、植えられています。撮影した2月中旬、艶やかな濃い紅色の梅が、境内を彩っていました。梅の見頃は、例年2月中旬ごろから3月中旬ごろまでです。

智積院が現在のように広大な寺になった背景には、智積院が歩んだ少々複雑な歴史があります。智積院は、もともと根来山(和歌山県岩出市)にあった大伝法院の塔頭でした。

数ある塔頭の中で、智積院は学頭寺院(僧侶に学問を授ける最高指導者)でした。根来山は、最盛期には約6,000人の学僧を擁していたといいます。

大伝法院は強大な勢力となったため、それを危惧した豊臣秀吉と対立していました。1585年に秀吉の攻撃により、根来山内の堂塔のほとんどが消失してしまいました。

当時の智積院の住職・玄宥(げんゆう)は、智積院の再興の訴願を続け、秀吉の死後、1601年に徳川家康から豊国神社の付属寺院の土地や建物を与えられ、智積院を再興しました。

その後、1615年に豊臣氏が滅び、隣接地にあった秀吉が3歳で死去した鶴松(棄丸)の菩提のため創建した祥雲寺の寺地を与えられてさらにその規模を拡大しました。

祥雲寺の建物は、1682年の火災で焼失し、今は何も残っていません。この時、障壁画は大部分が助け出されました。

現在、智積院が所有する長谷川等伯一門による国宝の「桜図」や「楓図」をはじめとする桃山時代の数々の障壁画は、祥雲寺の書院にあったものです。

金堂は、明治15年に火災で消失してしまいましたが、昭和50年の弘法大師誕生1200年記念事業で再建されました。金堂にはご本尊の大日如来像が安置されています。

上の写真は、弘法大師空海の像を安置している大師堂です。金堂の南隣の明王殿の前でも梅が咲いています。明王殿には不動明王が安置されています、建物は、京都四条の大雲院の本堂を譲り受けたものです。

紅白の梅はコントラストが華やかで、日が差し込むとさらに幻想的な雰囲気になります。智積院は混雑することはありませんので、穴場の梅の名所で早春の絶景を静かに楽しめます。



🌸アクセス
京都市東山区東瓦町964番地(東大路通七条下ル)
バス:京都市営バス「東山七条」バス停
電車:京阪電気鉄道京阪本線「七条駅」東へ徒歩7分

🌸ホームページURL
智積院オフィシャルサイト

🌸公衆トイレ
あり(きれい)

🌸周辺の見所

妙心寺圧巻の七堂伽藍|京都知られざる穴場の絶景

妙心寺(みょうしんじ)は、周辺の金閣寺龍安寺仁和寺という世界遺産の陰にかくれて、後回しにされているお寺かもしれません。でも、京都人は妙心寺のすごさを知っています。

妙心寺は、全国に約3,400ヵ寺ある臨済宗妙心寺派大本山で、塔頭は46にも及ぶ日本最大の禅寺です。世界遺産の龍安寺も妙心寺の境外塔頭です。

圧倒的スケールの七堂伽藍

南総門から境内に入ると、国の重要文化財に指定されている三門仏殿法堂(はっとう)などの諸堂が一直線に並んでいます。

上の写真は、承応2年(1653年)に建立された庫裏(くり)です。庫裏は七堂伽藍(しちどうがらん)のひとつで、国の重要文化財に指定されています。

庫裏は、寺の台所です。大寺院の妙心寺ともなると、一度に数百人分の食事を調理・配膳できなければならないので、当然大きな庫裏になります。

庫裏の中に入って高い天井を見上げると、巨大な木材が縦横に組まれています。5つの大かまどのある大庫裏小庫裏、三十畳の食堂(じきどう)、貯蔵庫などがあります。

上の写真は、鬼瓦切妻破風(きりつまはふ)です。本を開いて伏せたような切妻造の屋根にできる破風のことを切妻破風といいます。

美しい曲線を描く屋根は、木の薄板を幾重にも重ねる杮葺(こけらぶき)です。200年ほど前の改築で瓦葺にされていたものが、平成の修復工事で、建立当時の姿に復元されました。

梁が瓦屋根の重さに耐え切れなくなっていたので、杮葺に戻されました。ただし、杮葺は約20年から30年の間隔で葺替えをしなければならないそうです。

庫裏を出た所に椿が咲いていました。撮影した2月中旬は、まだほとんど蕾でした。

下の写真は、経蔵(きょうぞう)です。経蔵は通常公開されておらず、「京の冬の旅」などで特別公開されることがあります。経蔵も国の重要文化財に指定されています。

経蔵には、6,500巻の経典を納めた八角形の回転式輪蔵が据えられています。一回転させると全巻を読んだのと同じ功徳が得られるといいます。

1年に1回、僧侶がまるでアコーディオンのような経典を虫干しをされる際に、輪蔵に油をさして回転させるそうです。

内部には、輪蔵の前に経蔵の正面を向いた傅大士(ふだいし)像が安置されています。傅大士は輪蔵を考案した人で、2人の子と一緒に安置されていることが多いです。

輪蔵には、一面あたり100個、八面で計800個の箱があります。輪蔵の下段には四天王や金剛力士像など八天像が祀られています。

妙心寺の訪問後は、花の寺として知られる法金剛院をセットで訪問されるのがおすすめです。妙心寺の北門から出れば、龍安寺までは歩いて15分もかかりません。



🌸アクセス
京都市右京区花園妙心寺町64
<南門>
バス:京都市営バス・京都バス「妙心寺前」
電車:JR嵯峨野線「花園駅」東へ徒歩5分
<北門>
バス:京都市営バス「妙心寺北門前」
電車:京福電鉄北野線「妙心寺駅」東へ徒歩3分

🌸ホームページURL
妙心寺オフィシャルサイト

🌸公衆トイレ
あり(きれい)

📷周辺の見所
法金剛院、仁和寺、龍安寺、等持院

2017/02/11

轉法輪寺の大佛様と竜宮門|京都知られざる穴場の絶景

轉法輪寺(でんぽうりんじ)は、世界遺産の仁和寺のすぐ近くにある浄土宗の寺です。仁和寺の東門から出て、世界遺産の龍安寺へ向かう道の途中にあります。

普段は非公開ですが、事前に電話で予約すれば本堂を参拝できます。2月は半ば頃から涅槃図を特別公開されている(要確認)ため、事前予約は不要です。

大佛様に会える極楽世界への入口

駐車場を抜けて、鐘楼が楼門と一体化した鐘楼門をくぐります。白い漆喰が目を引くこの門には、重さ約4トンもの大きな梵鐘が吊るされています。

轉法輪寺ではこの門を竜宮城のような姿と表現されています。大晦日に限り鐘楼門の階上に上がって、鐘をつくことができます。鐘をついたら、本堂で新年のお参りができます。

撮影の2月中旬、京都市内でも積雪があり、本堂の前で咲いていたサザンカ(山茶花)に雪が積もっていました。

京都市内の中心部では積雪が少なく、雪はほとんど湿雪ですので、翌日すぐに溶けてしまいます。古都の雪景色を見られるのは、年に数日ですので見られた方はとてもラッキーです。

涅槃図の特別公開は盛況で、ご住職による絵解き説法の時間に合わせてこられる方が多いようです。 轉法輪寺の涅槃図は、1764年の作で縦5.3m、幅3.9mと大きなものです。作者は不明です。

損傷が目立つようになったため、1年半かけて修復されました。文化財に指定されていないので、写真撮影もOKとのことでした。お釈迦様のお姿ですので、掲載は控えます。

住職の法話は堅苦しくなく、テンポが良いので最後まで聞いてもあきません。そして、御室大佛とも呼ばれる身の丈約7.5mあるご本尊の阿彌陀如來座像は、京都で一番大きな木造の座像佛です。

絵解き法話が終わって本堂を出る頃には、雪はすっかり溶けていました。なお、毎年10月に開催される浄土宗寺院大公開の際も予約無しで参拝できます。

仁和寺龍安寺の2つの世界遺産の間にあって、立ち寄れる穴場の名所です。訪れる人は少なく、静かに美しい風景を味わうことができます。



🌸アクセス
京都市右京区龍安寺山田町2番地
バス:京都市営バス「塔ノ下町」バス停 西へ徒歩1分
電車:京福電鉄北野線「御室仁和寺駅」徒歩10分

🌸ホームページURL
轉法輪寺オフィシャルサイト

🌸公衆トイレ
あり

📷周辺の見所
仁和寺、龍安寺、等持院、妙心寺

龍安寺石庭の雪景色|京都知られざる穴場の絶景

世界遺産龍安寺(りょうあんじ)は、石庭で知られる臨済宗妙心寺派の寺院です。諸堂は、1797年の火災によって焼失したため、意外にも龍安寺に国宝に指定されている建造物はありません。

現在の方丈(本堂)は、1606年建立の西源院方丈を1797年に移築したもので、国の重要文化財に指定されています。石庭は方丈の南側にあり、白砂敷に15個の石が巧みに配置された枯山水庭園で、国の特別名勝に指定されています。

世界に誇る冬の日本の美

撮影の2月中旬、西日本の上空に強烈な寒気が流れ込み、京都市内も積雪しました。翌朝は青空が広がり、時折り陽の光が差すなか山門をくぐると、鏡容池の水面には美しい雪景色が映り込んでいました。

雪が多いと石庭の背の低い石が埋もれてしまいますが、絶妙な積雪でした。白いキャンバスに散りばめられた15個の石と土塀、雪化粧した木々が調和し、水墨画のような絶景を作り出していました。


よく見ると、雪の下の枯山水の砂紋がうっすら浮かび上がっていました。砂紋は毎日引くそうですが、雪の日は修行僧のお役目は免除です。

石庭は、春は桜、夏は緑、秋は紅葉と四季を通じて美しい光景です。冬は寒いですが、目の前に広がる水墨画のような光景は、縁側に座ってずっと眺めていても飽きることはありません。

方丈の襖には、臥竜梅(がりょうばい)が描かれています。梅の木の幹が低く枝がねじれて地上をはうような姿が、が伏せた姿を思わせます。

描いた画家は、京都生まれで大正末期から昭和初期に活躍した皐月鶴翁です。昭和32年に5年ほどかけて完成したといわれています。襖絵の梅が、冬の寒さの中にも春の到来を予感させます。

京都市内で雪が降ると、金閣寺には開門前から長い行列ができます。そして、上空をヘリコプターが飛ぶというのが定番です。龍安寺は穴場で、静かに雪景色の絶景を楽しめます。

4月になると修学旅行が始まるので、静かな龍安寺を味わいたいのなら3月までです。2月は、観光バスのツアー客も少なめです。縁側は寒いので、しっかり防寒してください。



🌸アクセス
京都市右京区龍安寺御陵ノ下町13
バス:京都市営バス・西日本JRバス「竜安寺前」バス停
電車:京福電鉄北野線「龍安寺駅」北へ徒歩7分

🌸ホームページURL
龍安寺オフィシャルサイト

🌸公衆トイレ
あり

📷周辺の見所
仁和寺、等持院、妙心寺、金閣寺

2017/02/04

京都御苑で早春を思いのままに|京都知られざる穴場の絶景

京都御苑(きょうとぎょえん)は、都会の公園でありながら千年の歴史と梅、桜、紅葉など四季折々の豊かな自然に囲まれたスポットです。例年1月中旬から3月上旬にかけて、が花を咲かせます。

京都御苑の梅は、幕末の戦いの弾痕が残る蛤御門近くの梅林宗像神社北側など数か所にまとまって植えられています。京都御苑全体で約200本あり、9割近い梅が梅林にあります。

梅を愛で思いのままに過ごす


撮影した2月上旬、梅林の紅梅と白梅は、早いものは見頃になっていました。全体的にはまだちらほらで、これから咲き始める感じです。

梅林には、一本の木から紅白の花を咲かせる「思いのまま」という珍しい梅が数本あります。2 月下旬頃、淡い白花に交じって、薄紅色の花が咲き始めます。

また、九條池にかかる高倉橋の北東に御苑の梅を代表する九條家ゆかりの「黒木の梅」があります。3月上旬頃に咲き始め、花は濃紅色で大輪の八重咲きです。丸太町通りからだと堺町御門の北西です。

早咲きの梅は、丸くてかわいい鮮やかに色づいたつぼみがふくらんでいました。気温の上昇と共に花芽は休眠期を終えて開花しますので、3月上旬にかけて変化が楽しめます。

梅の花をよく見ると、色や形状からして品種が異なるものがあります。約20品種が植えられているそうですが、品種名のプレートがないのが残念なところです。

国民公園協会のSNSに最新情報が載っていますので、開花状況をチェックしてから行くと、確実に花の見頃を楽しめます。かわいい花もさることながら、枝ぶりにも注目してください。

出水の小川のそばでソシンロウバイ(素心蝋梅)の花が咲いていました。ソシンロウバイは宗像神社北側にもあります。また、児童公園には花の中央が暗い赤色のロウバイがあります。1月上旬から咲き始めます。

また、梅と交代で3月中旬頃から4月中旬頃までの花が咲きます。約70本の桃が植えられている桃林は、梅林の北隣にあります。

桜は、早咲きの枝垂れ桜が3月中旬から咲き始めます。桜の時期はとても混雑しますので、早春の京都御苑で思いのままにゆっくり楽しんでください。



🌸アクセス
京都市上京区京都御苑
バス:京都市営バス バス停多数
電車:京都市営地下鉄「今出川駅」・「丸太町駅」

🌸ホームページURL
環境省京都御苑管理事務所オフィシャルサイト
https://www.env.go.jp/garden/kyotogyoen/index.html

一般財団法人国民公園協会オフィシャルサイト
http://fng.or.jp/kyoto/

🌸公衆トイレ
あり

📷周辺の見所
相国寺、護王神社、梨木神社